栄養素の代謝入門

物質・エネルギーのバランス

異化によって得られたエネルギーは、すぐ特定の同化のために使われるのではありません。
いったんATPという物質を合成する形で蓄えられ、
同化の際にはこれを分解し、エネルギーを利用します。
このように、色々な栄養素の異化過程がATPという共通の物質にいったんなだれ込み集約されるので、
ATPはしばしば「エネルギーの通過」と例えられます。

 

さて、燃焼によって変換される量のエネルギーを、CO2やH2Oに対してつぎ込むと、
ブドウ糖に戻すことができるのでしょうか。
エネルギーの収支だけを考えると、できるような感じですが、
一般に化学反応を起こすためには、色々な条件を整える必要があり、
この反応を実際に逆行させるのは、少なくともヒトでは至難の業です。

 

ですから、私たちは生じたCO2には無理に手を加えずに排泄し、
新たな栄養素を食事によって継続的に補充する戦略をとっています。
これは、エネルギー的に「高い」ものを摂取し「低い」ものを排泄していることを意味します。
差額にあたるエネルギーを体外へ放出する事も同時に必要です。
その大半は、熱放散という形で体表から捨てられ、
体内の熱酸性量と釣り合って体温を一定に保ちます。

 

放出エネルギーのうち、骨格筋を動かして物を運ぶなど「外への仕事」になるのは一部ですが、
これが再び食事行動などの形でエネルギー摂取に貢献します。

 

このように、複雑な化学反応を組み合わせながら、
全体として「物質の収支」と「エネルギーの収支」の両面でバランスを保つことが、
「代謝」というシステムの大きな特徴の一つです。